私が平成9年に受講したある研修があります。
それは当時所属していたNTTの営業担当者向けの研修でした。
その頃NTTの営業部門では「電話機売り」や「通信回線売り」から脱却し、企業の経営課題を踏まえて様々な提案営業を行うソリューション営業を目指していました。
私が受講した研修の指導講師は中小企業診断士でした。
その講師は、製造業でも小売業でもサービス業でも、様々な業種や業界について体系化された深い知識を持ち、その知識の量と質に圧倒されました。しかも的確にそれらの知識を使いこなして、対象企業の問題点や課題に切り込んでおられたのです。
その講師の指導を受け、営業担当者は、お客様企業の経営についても勉強し経営者の立場でものを考えて提案して行くべきだと考えました。客先の業界や経営についての基礎知識がしっかりしていると、お客様も安心して色々な相談をすることができます。
「この講師のようになりたい」と強く思ったのが中小企業診断士を志したきっかけでした。
中小企業診断士の学科試験を終えて診断実習に参加しました。その実習では、ある企業にお邪魔し、社長が取り組もうとしていたことについて助言を行うという課題が与えられました。私たち診断チームは、社長の計画について様々な視点で調査・分析し、妥当性の検証を行って、追加提案や助言を行いました。
この社長は大変強いリーダーシップをお持ちの方でした。個人で事業を立ち上げ、今日まで会社を立派に成長させてこられた方でした。しかし、それでもご自分の考えが正しいか悩んでおられました。なぜなら、この会社に限らず多くの中小企業には、大企業と異なり、経営者の考えやアイディアを客観的に分析し妥当性を検証する「企画部門」がないからです。
中小企業診断士の役割は、経営者の様々な判断をサポートする「企画機能」を補完するものだと、私は考えています。
資格取得後、私はお客様企業への提案営業や社内の営業研修、自社の課題解決などに取り組んでまいりました。営業チームの長(管理職)として、部下指導にも当たりました。
しかし、私のこれまでの人生において自分の力が最も発揮できたのは、長として働いている時ではなく、No.2として長を補佐する立場の時だった、ということにある時気づきました。
私の果たすべき役割は、経営者の補佐、参謀役、企業ドクターであると考えるに至りました。
経営者の補佐役、経営参謀を務めるためには、経営者をはじめ関係者の話をよく聞かなければなりません。そして経営者が進みたいと願う方向を明瞭にするお手伝いが必要です。そのため私は、以前学んだコーチングに加え、コミュニケーション心理学やIT系の学習なども進めてきました。
私は中小企業の経営参謀・企業経営のホームドクターとして、健康体の企業には将来の課題を早期発見し、体力が低下している企業であればその原因と対応策を提案し解決まで処方を行う、そんな役割を果たしてまいります。